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性感染症

クラミジア性尿道炎・淋菌性尿道炎

日本国内の性感染症の中で最も多いのはクラミジア感染症です。また淋菌感染症は20歳代の年齢層に多く見られ、クラミジアと淋病は性感染症を代表する病気です。

クラミジアはChlamydia trachomatis

淋病はNeisseria gonorrhoeae

という菌が性器や咽頭に感染することにより発症します。

時にクラミジアと淋菌に同時感染する場合もあります。

それぞれの特徴の比較

クラミジア感染症
  • 感染機会から1〜3週間後に症状が出やすい
  • 女性に多く男性の2倍以上と言われる
  • 症状が軽く、本人は気がついてない場合が多い
淋菌感染症
  • 感染機会から2〜7日後より症状が出やすい
  • 男性の感染者数が多い
  • 男性は症状が強く、女性は軽い症状が多い

それぞれの症状の比較

クラミジア感染症
  • 男性では尿道から少し濁った分泌液を排出しかゆみ、違和感、不快感を覚える
  • 女性ではおりものの増加、不正出血、性交時痛を伴うが、8割は無症状である
淋菌感染症
  • 男性では尿道より膿性の分泌物を排出し強い排尿時痛を伴う
  • 女性では黄色のおりものが出る、不正出血、性交時痛、頻尿や排尿時痛を伴う

クラミジア・淋病の合併症

クラミジアと淋病はそれぞれ放置すると同様の合併症を引き起こします。

男性では精巣上体炎を合併します。両方の精巣 上体炎を発症した場合、無精子症を生じる場合 があります。

女性では子宮頚管炎や卵管炎、卵巣炎、骨盤内腹膜炎を起こします。卵管炎や卵巣炎は不妊の原因となります。

母子感染の影響は?

母子感染とは、妊娠中にクラミジアや淋病に感染すると出産時に赤ちゃんに感染することを言います。

クラミジア

新生児肺炎や新生児結膜炎を発症します

淋菌

新生児淋菌性結膜炎や関節炎を起こします

淋菌性結膜炎は治療が遅れると角膜に穴が空いてしまい、失明する可能性があります

診断方法は?

男性では尿検査により、女性では膣の拭い液を検査することにより診断します。

治療方法は?

クラミジア、淋菌にそれぞれ適応のある抗生物質を使って治療します。

治療後、治癒判定のため2〜3週間後に再度検査をすることが望ましいとされています。

またピンポン感染※の予防のため、必ずパートナーの治療も必要です。

※ピンポン感染とは、性感染症の治療を終えたあともパートナー同士でお互いに感染を卓球のピンポンのように行き来してしまう事です

梅毒

梅毒とは?

梅毒トレポネーマという菌による代表的な性感染症の一つです。

梅毒トレポネーマは粘膜や皮膚の細かい傷口から侵入し、その後全身に広がり様々な症状を引き起こします。

梅毒の特徴は?

  • 感染から10〜90日の無症状の期間を経過して発症する
  • 男性は20〜50代と幅広く罹患する
  • 女性は20代に突出して多く、増加傾向である
  • 初期は性器ヘルペスと酷似することがある

梅毒の原因は?

主に性行為により感染します。

性器の接触以外にも、口や肛門、キスなどの接触からも感染経路になります。

梅毒の症状は?

感染してからの経過時間により早期梅毒と後期梅毒に分かれ、それぞれの時期により症状が異なります。

①早期梅毒(感染から1年未満)
早期梅毒第1期(感染から1〜3 ヶ月頃)

梅毒が侵入した場所(性器や口の中、乳輪、肛門付近など)に痛みのないしこりが出来ます。また鼠径部のリンパ節が腫れることもあります。

その後、しこりはびらんや潰瘍に発展しますが、痛みがないことが多く、治療しなくても消失することがあります。ただし、症状が消失しても体内には梅毒は存在し、この頃は感染力があるため性行為によりパートナーが感染する可能性があります。

早期梅毒第2期(感染から3ヶ月以降)

この頃になると梅毒が血液によって全身へ運ばれるようになります。身体に赤い斑点(バラ疹)が拡がり、手のひらや足の裏に生じた皮疹は梅毒性乾癬と言われます。肛門にも平らなしこりを伴う事があり、扁平コンジローマと呼ばれます。

その他脱毛や咽頭の発疹など、様々な症状を認めますが、治療しなくても消失することがあります。しかし、自然治癒するということはなく、そのまま後期梅毒へゆっくりと進行していきます。

②後期梅毒(感染から1年以上経過)

感染から3年以上経過すると皮膚や筋肉の中に腫瘍(ゴム腫)が発生します。更に放置した場合はだい心血管病変(大動脈瘤、大動脈炎)、進行麻痺、脊髄癆などの重症な合併症を起こしますが、現在わが国ではここまでの進行性梅毒が見られるのは稀です。

梅毒の診断方法は?

感染機会から4週間以上経過していれば採血検査により感染の有無を確認することが出来ます。

RPRとTPHAという項目を測定します。

梅毒の母子感染について

妊娠前に感染した梅毒でも感染後1年の間は感染力があるため、母子感染のリスクがあります。

梅毒の母子感染により、子供に先天梅毒を発症します。

早期先天梅毒(生後数ヶ月以内)

水疱性発疹や全身のリンパ節の腫れ、肝臓や脾臓の腫大、鼻閉などを伴います

晩期先天梅毒

角膜炎、難聴、ゴム腫、麻痺、脊髄癆、視神経障害など、重い合併症を起こします。

先天梅毒は抗生剤により治癒することが出来ます

梅毒の治療方法は?

抗生物質により治療します。

治療後も一定期間の採血を行い、治療判定を行います。治療判定は可能な限り1年程度は続けることを推奨されております。

性器ヘルペス

単純ヘルペスウイルス(1型、または2型)の感染により発症します。口の周りに発疹ができる口唇ヘルペスも同じ1型が原因となります。

※水痘帯状疱疹は3型に分類されるヘルペスウイルスですので、性器ヘルペスとは異なります。

性器ヘルペスの特徴は?

  • 初感染から2〜10日間を経て病変が出る
  • 体調や性行為の刺激により再発する

性器ヘルペスの感染経路は?

主に性行為により感染します。口唇ヘルペスを発症していた場合、唾液接触部位(乳房や臀部など)に発疹が生じることもあります。

性器ヘルペスの症状は?

性器にかゆみや違和感を伴う水ぶくれ(水疱)が出現します。やがて水ぶくれは破れると痛みを伴うびらんや潰瘍を起こします。鼠径のリンパ節が腫れたり、尿道からの分泌物を認めることもあります。

びらんや潰瘍は梅毒の症状と特徴が似ており、梅毒を否定しておくことも重要です。時に梅毒とヘルペスが重複感染することもあります。

性器ヘルペスの診断方法は?

主な症状を視診で判断します。

びらんや潰瘍からの拭い液や、血液中の抗体検査により判断することもあります。

性器ヘルペスは再発する?

再発します。

発疹などの皮膚病変が一旦治ったように見えても、感染したヘルペスウイルスは神経の奥に潜伏しています。心身の疲労や性行為、月経などのきっかけが再発の契機になることがあります。

母子感染について

妊娠中にヘルペスを発症した場合、問題となるのは経産道感染です。赤ちゃんにヘルペスが感染した場合、発熱や水疱のみの軽症なものから、脳炎や髄膜炎など、致死的な合併症を起こすこともあります。そのため、経産道感染のリスクが高いと判断した場合は帝王切開を選択することもあります。

膣トリコモナス感染症

腟トリコモナス原虫による感染症です。

最もポピュラーな性感染症として古くから知られています。

腟トリコモナス感染経路は?

性行為により感染します。

膣のみではなく、子宮内部や尿道内、前立腺などにも侵入し、ピンポン感染を引き起こします。

感染者の年齢層が他の性感染症床と比較すると非常に幅広く、時に中高年者にもみられることがあります。

腟トリコモナス症の症状は?

男性に比べて女性のほうが症状が強く出やすいですが、それでも20〜50%は無症状で経過すると言われています。

女性の症状としては泡状で悪臭の強いおりものを認めたり、膣の刺激感やかゆみを自覚します。

男性の場合は尿道炎を起こし、排尿時の違和感や尿道分泌物の増加を認めます。

腟トリコモナスの診断方法は?

男性は尿検査により、女性は膣拭い液によりそれぞれ診断します。

腟トリコモナスの治療方法は?

メトロニダゾールという抗菌薬を使用します。

抗菌薬の投与で90%以上は消失すると言われています。

腟トリコモナスの母子感染について

妊娠中に感染しても赤ちゃんには感染する事はありませんが、早産や早期破水のリスクは高くなる可能性があります。

そのため妊娠前に感染の有無を確認する[ブライダルチェック]は大切な赤ちゃんを守るための予防となります。

マイコプラズマ感染症

最近徐々に増加傾向にある性感染症です。

マイコプラズマ・ジェニタリウムという細菌が感染することにより起こります。

性行為の多様化により口腔内細菌からの尿道炎も多く認められるようになり、[淋菌]や[クラミジア]だけではなく、マイコプラズマ・ジェニタリウムの病原性も無視できなくなってきています。

マイコプラズマの感染経路は?

マイコプラズマ感染者との避妊具を使わない性行為や口腔内からの感染が主な経路です。

マイコプラズマの症状は?

尿道炎の症状は様々です。

尿道分泌物はサラサラのものから膿性のものまであります。その他に尿道痛が非常に強いものから、かゆみや違和感程度のものまで多様であり、症状のみでは診断は困難です。

感染が進行すると精巣上体炎や卵巣子宮頚管炎へ発展するため、不妊の原因となります。

マイコプラズマの診断方法は?

尿検査、または膣拭い液から判定します。

結果が出るまでは数日かかります。

マイコプラズマの治療法は?

適応のある抗生物質で治療します。

しかし、近年マイコプラズマ・ジェニタリウムの薬剤耐性化が世界的に問題になっています。もし薬剤に耐性がついたマイコプラズマに感染した場合、抗生剤の効果が得られないことがあり、治療期間が長期化する可能性があります。

母子感染の影響は?

早産や自然流産の原因となったり、新生児肺炎などを合併する場合があります。

尖圭コンジローマ

ヒトパピローマウイルス(HPV)感染による性感染症です。

HPVには色々なタイプが存在しますが、その中で尖圭コンジローマの原因はHPV6、またはHPV11による感染がほとんどです。

HPV16・HPV18が感染して起こる尖圭コンジローマもあります。HPV16・HPV18は子宮頸がんを引き起こすハイリスク型のウイルスでもあります。

尖圭コンジローマは予防できる?

尖圭コンジローマは性感染症の中で数少ないワクチンで予防出来る疾患です。

HPVワクチンである[ガーダシル]はHPV6型・11型・16型・18型に対応しており、数回接種することにより尖圭コンジローマを予防出来ます。

尖圭コンジローマの症状は?

男性は陰茎矢亀頭に、女性は膣周囲や子宮頸部にカリフラワー状のイボが発生します。肛門周囲や肛門内、尿道に発生する場合もあります。

イボ自体は痛みを伴わず、無症状のことが多いです。

尖圭コンジローマの診断方法は?

感染機会の有無確認と、特徴的なイボの視診により診断が可能です。

尖圭コンジローマの治療方法は?

①クリームによる治療
②炭酸ガス、またはレーザーによる治療
③電気メスによる切除
※尖圭コンジローマの再発率は高く、20〜30%と言われています。

尖圭コンジローマと母子感染

経産道感染により新生児に感染し、若年性再発性呼吸器乳頭腫症(JORRP)を発症することがあります。

JORRPは咽頭・気管・細気管支などの気道粘膜から良性腫瘍が発生します。この良性腫瘍は摘出しても再発してくる厄介な病気であり、時に気道閉塞を起こして致死的となることもあります。

JORRPは小児の咽頭・喉頭に発生する良性腫瘍の中で最も多い疾患と言われています。

A型肝炎

A型肝炎ウイルスへの感染により発症します。

ほとんどは慢性化することなく自然に回復しますが、一部で肝不全へ移行する場合もあり、注意が必要です。

A型肝炎の感染経路は?

汚染された水や食品等から感染します。

人から人へ感染する場合は便から経口への感染経路が基本とされています。感染力は強く、家族やパートナーへ伝播することがあります。

性行為、特に同性間性的接触により感染する症例が多く見られます。

4年毎に小規模な流行があるのが特徴ですが、原因は分かっていません。

A型肝炎の症状は?

  • 発熱
  • 倦怠感
  • 黄疸(眼球結膜や皮膚が黄色くなる)
  • 食欲不振、嘔吐
  • 肝腫大
  • 便が白い

A型肝炎の診断方法は?

エコー検査による肝臓の精査や抗体検査により判断します。

A型肝炎の治療方法は?

肝不全にまで発展しなければ対症療法のみで軽快します。

A型肝炎ワクチンについて

A型肝炎ワクチンは不活化ワクチンです。抗体獲得率は100%近いと言われています。

A型肝炎ウイルスはアジア・アフリカ・中南米などの各地域で高度に流行しており、流行地域へ渡航する際は事前にワクチン接種が強く推奨されます。

B型肝炎

B型肝炎ウイルスに感染した場合、成人においては持続感染(キャリア化)はほとんど起こさずに、一過性感染で終わることが多いとされています。

B型肝炎の感染経路は?

B型肝炎ウイルスは血液だけではなく、精液・膣粘液などにも含まれるため、感染の原因の多くは性行為によるものとされています。

B型肝炎の症状は?

性行為により感染後、2〜6週で血液検査に陽性反応が現れます。

主な症状は倦怠感・食欲不振・赤褐色尿です。

血液検査では肝機能障害、黄疸などを認めます。意識障害が起きた場合は肝不全の可能性があり、注意が必要です。

B型肝炎の診断方法は?

血液検査の抗原・抗体検査により、現在の感染の状況を知ることが出来ます。

B型肝炎の治療方法は?

持続感染(キャリア化)の場合は、血液検査の状況をみながら抗ウイルス薬を用いて、ウイルスの増悪を抑える必要があります。

B型肝炎のワクチンについて

2016年より、0歳児を対象とした定期接種が導入され、無料で接種出来るようになりました。

B型肝炎ワクチンの標準的な接種可能時期は次のとおりです。

  • 1回目の接種 生後2ヶ月
  • 2回目の接種 生後3ヶ月
  • 3回目の接種 生後7〜8ヶ月

生後12ヶ月を超えた後は任意接種となりますが、どの年齢でも接種可能となります。

ワクチンにより獲得した免疫は15年程度継続することが確認されていますが、年齢と共に抗体価は減少していきます。

性交渉による感染に不安を感じた場合は、抗体検査を受けることが推奨されています。

必要に応じて、しっかりとワクチン接種を受けましょう。

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